感動、癒し、喜び,  経済

愉快!爽快!痛快!下町ロケット

手に汗握る企業エンターテイメント小説だ
若干漫画チックな場面もあるが
そんなことも許せるほどの読書後の爽快感がある
特許訴訟、銀行の貸し渋り、弁護士、M&A、キャピタルファンド
そしてライバル企業、大企業
等を絡めながら物語が進んでいく過程は
今の日本の中小企業が置かれている問題点を浮き彫りにしている
会社とは何か?夢とは?プライドとは?
ものづくり日本の原点を深く考えさせられる小説だ
 
池井戸潤(いけいどじゅん) 1963年6月岐阜県生まれ
 
慶応大学(文学部・法学部)卒業後三菱銀行入社
その後作家活動に入る
1998年  果つる底なき   第44回江戸川乱歩賞受賞
2010年  鉄の骨      第31回吉川英治新人賞受賞
2011年  下町ロケット   第145回直木賞受賞
 
ロケット開発に夢をはせ失敗した佃は
父の後を継ぎ町工場の経営者に・・・・
突然の取引先からの発注見直し
ライバル企業からの戦略的な特許訴訟、
銀行の貸し渋り
弁護士の選択
降りかかる難問、それを葛藤し悩みながら切り開いていく姿が
とても感動的だ
ナカシマ工業との裁判に勝つ場面などは『ざまあみろ!』と拍手喝さいだ
 
そのころロケットプロジェクトを推進する帝国重工は一瞬の差で
特許が取れなかった事に愕然としていた
その特許を持っていたのはわずか200人足らずの町工場 佃製作所だった
帝国企業の財前部長は特許権売却での話をスタート
佃社長は迷いながらも拒否
再度財前部長は特許使用権の話を持ち込む
佃社長は悩みながらも話を断り、あくまでも製品納入のチャレンジをしたいと話す
とまどう町工場の社内の人間模様
対する大企業の論理
仕事に対する誇りと夢、現実的なお金と生活の挟間で揺れ動く人間たち
 
すべてがバラバラになる社内危機を乗り越えて
佃製作所はロケットエンジンのキーテクノロジーのバルブシステム納入に挑んでいく
そして佃社長は再びロケットの夢にチャレンジしていく
 
個人的に好きなのは帝国重工の財前部長だ
切れ者と言われ自信満々だった部長は佃社長とのやりとりのなかで
徐々に気持ちが変化していく
佃品質への驚き、部下の裏切り、それらを乗り切り
そして最後は藤間社長を前にした役員会でのプレゼンテーションで
バルブシステムの佃品質の高さと他社の動きも捉えながら
佃社長のロケット開発の失敗の経歴を披露する
そのロケット開発を受託していたのが帝国重工の藤間だったのだ
そしてロケットプロジェクト、スターダスト計画の
すべての製品の内製化の方針の藤間社長を説得する
今回だけ例外を認めてください・・・・
との一言は胸を打つ
 
その上司の水原本部長の深さもクールだ
彼が嫌いなものは3つ
負けと妥協と言い訳だ
それは仕事のやりかたに表れている
担当には精一杯仕事をやらせながら
次の手もしっかり打つしたたかさ
先回りと深読みの感覚と手法
しかもそれを部下たちには決して感じさせない大人の風格がある
 
敢闘賞は佃製作所の殿村さん
銀行出向でありながら佃製作所の立場になって
佃社長を理解しながら全身全霊でとことん守っていく
涙が出るほど生真面目でぶきっちょで温かい
トノー かっこいい!
 
佃社長は言う
仕事は2階建ての家のようなものだ
一階は飯を食うため
そして2階は夢を追う部分だと・・・・
 
夢か現実か?誇りか金か?
等心の中では揺れながらも最後の一線だけは越えなかった佃社長の信念
最後のハッピーエンドが
こんな時代だからこそなおさら輝いて見える
 
今まさに日本が問いかけられている様々な問題を
この小説はすべてを網羅しているようだ
仕事に対する夢とロマン
想いは実現するという強き心が一番だ
読み終わった後の爽快感が明日の日本の希望になる
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