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逝きし世の面影(渡辺京二)

四、五年程前にある方からいただいたのが
逝きし世の面影という本だ
この本は1999年和辻哲郎文化賞を受賞した名著でもある
読みながらはっと気付かされる貴重な本でもあった
 
幕末から明治にかけて来日した西洋人たちが
日本の国がどういう国なのかを
外国人の目を通して素直にわかりやすい美しい日本語で書いてある
実は私はこの本を読んで外国人から見た当時の日本に感激したことがある
日本って素晴らしいと・・・・・・
 
ただ現在
日本人は幸福度ってあまり感じていないのが現実だ
簡素さと豊かさなんて誰が思っているのか?
農業も後継者問題、TPPなど問題が山積している
里山をだれが今から守っておくのか?
日本の中でも親や子の殺人など昔では考えられなかった
犯罪も勃発している
 
そんな現代日本を生きている中で
この本を読むとあの時代の日本人の素晴らしさや幸福度
そして農業を通しての地域整備など
あらゆる観点から目からうろこの自国日本が見えてくる
少しご紹介したい!
 
 
第3章 簡素と豊かさ
 
ハリス 1856年8月に日本に着任し下田近郊を訪ねて
 
この土地は貧困で住民はいずれも豊かではなく
ただ生活するだけで精いっぱいで装飾的なものに目を向ける余裕はない
それでも人々は楽しく暮らしており、食べたいものは食べ
着物にも困っていない。
それに家屋は清潔で日当たりも良くて気持ちが良い
世界のいかなる地方においても
労働者の社会で下田におけるよりも
良い生活を送っているところはあるまい
 
イライザ シッドモア  1884年鎌倉の風景の描写
 
日の輝く春の朝、大人も男も女も子供らまで加わって
海藻を採集し砂浜に広げて干す
漁師のむすめたちが脛を丸出しにして浜辺を歩きまわる
藍色の木綿の布きれを姉さんかぶりにし、背中に籠をしょっている
子供らは泡立つ白波に立ち向かったりして戯れ
幼児は砂の上で楽しそうに転げまわる
・・・・・・・・婦人たちは海藻の山を選別したり
ぬれねずみになった御亭主に時々ご馳走を差し入れる
あたたかいお茶とごはん
こうした風景がすべて陽気で楽しい
誰もかれも心うきうきと嬉しそうだ
だから鎌倉の生活は、歓喜と芳醇から成り立っているかのように見え
くらい面などどこ吹く風といった様子だ
 
まるで映画の情景が目に前に拡がって行くような美しい日本の春の風景だ
ブータンの幸福度は話題になったがまさしく日本の幸福度は
この時代日本にあったと確信できる
 
 
第四章  親和と礼節  エドウィン・アーノルド
 
この国以外世界のどこに気持ち良く過ごすためのこんな共同謀議
人生の辛いことどもを環境の許す限り、
受け入れやすく品のよいものたらしめようとする広汎な合意
洗練されたふるまいを万人に定着させ受け入れさせるこんなにも見事な訓令
言葉と行動の粗野な衝動のかくのごとき普遍的な抑制
毎日の生活のこんな絵のような美しさ
生活を飾るものとしての自然へのかくもいきいきとした愛
美しい工芸品へのこのような心からの喜び
たのしいことを楽しむ上でのかくのごとき率直さ
子供へのこんな優しさ
老人と両親に対するこのような尊重
洗練された趣味と習慣のかくのごとき普及
異邦人に対するかくも丁寧な態度
自分も楽しみ人を楽しませようとする上でのこのような熱心
この国以外のどこにこのような国が存在すると言うのか・・・・・・?
 
日本について色々な意見がある現在において
わずか150年足らずの過去の日本が
私にとって模範の日本であったことは間違いがない
 
私達が失ってきた日本の凄さと素晴らしさを
しっかりと感じなければならない
そのことをいつも読むたび気付かされるのがこの本である
 
様々な問題に向き合わざるをえないのが今の日本だと考える
日本は再度
西洋人が見た素晴らしきあの日本を目指す時だと考えている
その起点は里山かもしれないし、農村、漁村かも知れない
過去の日本が持っていた幸福度を客観的に見て考え行動を起こすことが
日本の明るい未来につながるのかもしれない
 
逝きし世の面影の過去の日本は
近未来の日本でなければならないと私は確信する・・・・・