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逆境経営~獺祭を世界に届ける逆転の発想(特別講演会)

9月7日宮崎キャビア事業協同組合が主催して、

旭酒造株式会社代表取締役社長・桜井博志氏による特別講演が

宮崎観光ホテルで行われました。

演題は「逆境経営~獺祭を世界に届ける逆転の発想~」

山口県から世界で有名な日本酒となった獺祭の事例に学び、

宮崎キャビア1983をどう世界へと羽ばたかせるのか

海外展開に向けての講演です。

桜井社長のさまざまな実戦での挑戦を聞きもらすまいと、

会場は皆さんの熱気があふれていました。

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桜井社長が受け継ぐ前の旭酒造は、山口県旧岩国市の中でも4番目の蔵。

そのため山口では厳しい、結果東京を市場として考えた

東京の市場に打って出ても

「山口で酒ができるのか?」と言われていました。

“今”がある理由を桜井社長は

「東京市場にしがみついた、しがみつくしかなかったから」と振り返ります。

 

失敗したからこそ

酒蔵を継いでからは、失敗し、その壁を乗り越えることの連続。

山口県内で山田錦の苗を必要としても、

山口県のJAから数年も断られ続ける。

酒の閑散期である夏場にも酒をつくり経営を安定させたいと考え、

流行だったクラフトビールを醸造し、

錦帯橋河畔に地ビールレストランをオープンしたものの

3カ月後に大赤字で撤退。

さらにその影響で杜氏から三下り半を突き付けられる……。

大学に通う息子さんに送るお金も準備できないという、

聞いているだけで胃が痛くなってしまう状況です。

そこで驚くのが、杜氏がいなくなってからたった数日で

「自分でお酒を造ろう」と思いたったこと。

「生きるか死ぬかをくぐり抜けた自分の造りたい酒だけを造ろう」

追い込まれて腹をくくった人間の力とは、なんなのでしょう。

桜井社長の「杜氏や蔵のみんなが危機の時にずっと一緒にやりましょう

と言ってくれていたら、今はなかった」

逆に負け組だったからこそ、変わるしか道がなかった。変わっていけた」

という言葉が心に染みます。

 

ここで山田錦の玄米と3割9分、2割3分まで磨いた山田錦の写真が映し出されました。

これを見ると、多くの酒蔵の方に「ここまで磨くのはもったいない。

技術があれば、同じ味ができる」と言われるそうです。

ところが桜井社長は

「素人が集まっているから、できることはなんでもやろう。

力づくでいい酒を造ろうというのが私たちの考え方」ときっぱり。

マーケットに関しては「既存の市場にこだわらない」と力を込めます。

大きな市場に行きたいと、東京から世界を目指したのは、周知の通り。

海外では、まず日本の文化について理解してもらうことを大切にしてきました。

 

日本酒は、ただ受け継がれてきた伝統というわけではなく、

改善・改革・工夫の上で今の味があるというのが桜井社長の考えに貫かれています。

昨日と同じことをやっていては、この味が出ないといいます。

完成したばかりの地上12階建ての工場が

全て稼働すれば、5万石の酒(山田錦20万俵分)ができます。

昨年は1万2千石、今年は1万6千石、来年は2万4千石の生産予定とか

そのため奔走しているのは「なんとかして山田錦を増やすこと」

山田錦の生産量は全国で一昨年38万俵、昨年は48万俵、

そして今年は50万俵と日本農業の米の低迷から考えると素晴らしい勢いです

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「地産地消ではなく、いい原料を全国から集めて

いい酒を理解してもらえるお客さんに

国境を超えて、県境を超えて届けたい」と桜井社長。

「宮崎キャビアから声をかけてもらったのは、本当にうれしかった」と話します。

地方の産物が成功していくためには、県の中だけでは生きていけません。

世界を目指すには県境を越えてタッグを組むことも必要となる!

また「大事なのはお客様」という意志を貫き通すことが、まずは一番ということに納得です。

崖っぷちで生き残り、世界を股にかけて勝負できた酒蔵で

最も大切にしてきた原点は、

おいしい酒をお客様に飲んでいただきたいという基本の基本だけだったのです。

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県境を越えて地方の素晴らしい商品同士が手を結び、

日本の食文化を世界市場に拡げていく。

獺祭と宮崎キャビアの試みがその先駆けとなり、

世界で一段と飛躍していくことを心から祈念したい!