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フラッシュ・ボーイズ(マイケル・ルイス)

いま世界の株式市場を席巻しているのが
HFT(HIGH FREQUENCY TRADING)
10億分の一秒で取引するという超高速の高頻度取引だ
 
通常の取引より
常に先回りで取引を執行させ
合法的に勝率100%の取引を行う
この実態を社会に明らかにした本が
マイケル・ルイスが書いたフラッシュ・ボーイズ
2014年アメリカで出版された際には
ウォールストリートだけではなく、アメリカ司法省を含め
欧州でも大きな反響をもたらし
欧州ではHFTに関する規制も設けられた
 
マイケル・ルイスは
リーマンショックを取り上げた世紀のカラ売りや
大リーグのマネーボールなど経済小説では第一人者だ
この本を書き上げた後
アメリカ株式は操作されており
投資家は八百長ゲームが行われているカジノへ案内させる
まぬけな観光客のようなものだと語った
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さて本の内容は
実際のノンフィクションの物語である
主人公は日系のカナダ人であるブラッド・カツヤマ氏(37歳)
当時は金融関係ではあまり知られていない
ロイヤル・バンク・オブ・カナダ(RBC)に勤めていた
そのシニアディレクターだったころ
取引画面で注文できる価格で注文できないことがよくあることに気づいた
原因を調査した結果
HFTを駆使する高頻度トレーダーと取引所の結びつきや
アメリカの複雑な構造が原因だと結論付けた
HFTの高頻度トレーダーは取引所とトレーダーが出す注文を執行する
時間の差を利用して利益を上げていたのだ
カツヤマ氏が
市場のイカサマを発見し実証する場面は
実に爽快だ
 
超高速取引をする連中にとって
リスクなしで利益を上げるのに必要なのは正確な情報ではない
必要なのは自分たちが有利になるよう
体系的にオッズをゆがませることだけだ
 
(ヘッジファンドの経営者に)
貴方がお金をやりとりする祭の情報の価値は、
すべてブローカーと取引所によって競りにかけられ
超高速業者に渡されているんです。
彼らはその情報を使って貴方を食い物にしている
 
HFT業者はどこも取引所と同じ建物の中にサーバーを移して
マッチングエンジンに出来るだけ近い場所に置くようにしているんです。
だから他の誰よりも早くデータを手に入れられる。
 
マイケル・ルイスはHFTの業者をプレデター(捕食者)と呼ぶ
カモになるのは大手の機関投資家や一般投資家だ
 
会社を辞めて
カツヤマ氏とその仲間たちは
公平な市場づくりを目指していく
それは巨大システムの詐欺を無効にする自らの取引所を立ち上げることだった
実際にこの本の出版後
IEXというカツヤマ氏の会社のダークプールは米国で最大のダークプールとなった
 
カツヤマ氏は学生時代フットボールをやっていた経験から
今の株式市場の状態をスポーツにたとえ
審判が試合の結果と利害関係を持ってはいけない と話す
 
日本でも現在HFTによる取引が25%ぐらいになっていると言われている
日本の取引所の傍らにHFTのサーバーを有償で設置するコロケーションサービス
このコロケーションサービスの金額の伸び率が実は半端ではないのだ
この金額の多さこそが一般投資家をカモにする裏返しの証明とは言えないだろうか?
まさに審判(取引所)が試合結果(HFT取引業者)で金額を受けとる
これが真実であれば一般投資家はカモでしかない!
この本は現在の電子マーケットにおける警告の書だということもできる
日本の取引所とHFTサーバーのコロケーションサービス自体の
真相を解明する日本のブラッドカツヤマ氏が出てきてほしいものだ