影裏(沼田真祐)
第157回芥川賞は沼田真祐氏が書いた
「影裏」が受賞した。
この作品は5月に文学界新人賞も受賞している
主人公の私と友人日浅氏の物語
冒頭の美しい岩手の自然と釣りの描写は印象的だ
人間の持つ一貫性とブレみたいなものが
上手く描かれている
日浅の性格を表す
「何か大きなものの崩壊に感動しやすくできていた」
これが受賞作のキーワードだろう
釣りの話かと思えば
途中にLGBTの世界が描かれていたり
東日本大震災まで出てくる
そして日浅氏の親父から開かされる彼の正体
「息子なら死んでいませんよ」
という親父の言葉からは続編も期待できる
日本酒の話が出てくる
鮎をつまみに田酒、南部美人が話に出てくるのも
個人的には大変嬉しい
全体的な描写の中に
重要な情報をちりばめるテクニックは
新人とは思えないうまさだ
物語の底流に流れるものは崩壊なのだろうが
いったい作者はこの作品で何を描きたかったのだろう
読んだ後に重たい空気感が残る
次回は私と日浅氏の続編も含めて
長編も読んでみたい