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蝉しぐれ(藤沢周平)

夏真っ盛りだ

夏と言えば蝉時雨

蝉が木立の中に入るとみーんみーんと響いてくる

これば時雨のようだとつけられたそうだ

正岡子規の俳句にこんな句がある

笠とるや 社(やしろ)の下道 蝉時雨

いかにも昔の時代の日本の夏の風情を感じる句だ

 

そんなことを考えながら

藤沢周平の代表作の一つでもある

蝉しぐれを読み返して見た

父親が政変に巻き込まれ、

家督を減らされた少年、牧文四郎の成長やふくとの淡い恋

3人の若者の友情、剣術の修行と秘剣村雨の伝授、

策略の罠と逆転、などを描いている

物語の節目節目には蝉時雨が鳴り響く

藤沢文学の日本の香り立つ風景を描いた代表作の一つだ

 

3人の若者との友情と対比する形で描かれる

文四郎とふくの淡い恋、そして最後の場での確かめ合った心

蝉時雨の木立の中から日差しの野に馬と駆け出す文四郎

描かれていく物語が友情と恋の2つのコントラストで厚みを深さを与えている

強く気高く生きる生き様が読書後の清々しさを一層際立たせる、

 

古き日本の原風景や武士の心構え、生き方など

和の精神を現代に改めて教えてくれる印象的な藤沢文学の傑作の一つである