あるがままに (大杉漣)
大杉漣氏が亡くなって一か月が過ぎた
大杉さんは66歳と私より年が上だが
65歳を過ぎてなお
光り続けるあの輝きは
同世代の男性としてもあこがれだった。
にこにことした笑顔、包容力、優しさ
まさに彼の信条である「あるがままに」のような自然体だった
そして長年の実績に裏打ちされた深い演技力は
多くのファンを魅了していた
彼の転機となったのは北野武監督との出会いだろう
映画ソナチネのオーディションに1時間遅刻して会場に行き
すでにかたずけがはじまって
スタッフと話をしている北野監督のところに行ったが
2〜3秒見ただけで
「もう帰っていいですよ」との監督の言葉
受かるわけないと思っていたら
数日後大杉さんで行きますからの返事をもらいビックリした
北野監督は借金の取り立てのやくざの役の大杉に
全てアドリブでやってくれとの指示
そのアドリブの軽妙さに「こいつ、うめえな!」と舌を巻いた
そして、それからの北野映画には不可欠な役者になっていったのだ
大杉は北野組の仕事を次のように語っている
自分が役者としてもやもやしていた時に
こんな映画作りがあったんだと知った作品
何物にも代えがたい、俳優としての宝であり夢のような時間だった
独特の緊張感です
北野組って1回味わうと2度と味わいたくないと思って
撮影が終わるとその緊張が恋しくなる!
バイプレイヤーズのドラマの撮影中に突然亡くなってしまった大杉蓮氏だが
彼は最後のプレゼントを私たちに用意してくれた
10月6日上映の教誨師(きょうかいし)だ
「受刑者に対して道徳心の育成・心の救済につとめ、彼らが改心できるよう導く」
教誨師(きょうかいし)の役で主演している
独房で孤独に暮らす6人の死刑囚と対話する主人公の佐伯に扮し、
その苦悩や葛藤を描き出す。
大杉氏はその映画のエクゼクティブプロデューサーの役割も果たしている
楽しみに最後の主演映画の公開を待ちたい!