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ラフマニノフの鐘は鳴らず・・・・・

世界で3回転半のトリプルアクセルを飛ぶスケーターは浅田真央しかいない
このジャンプの天性の才能とつなぎの濃度の深い技を結ぶつけて
それ以上の飛躍をと、勝負にかけたのがタラソワだ!
ラフマニノフの鐘は予想以上に重苦しい曲
しかもジャンプとつなぎの2つが大きな両輪の構成だ
休む暇も無くジャンプにかける準備時間も極端に少ない
ただ成功すると演技が重たい調べを劇的な調味料にしてしまう
この曲はあえて言うならニトログリセリン的な劇薬だ
 
3ヶ月前まではラフマニノフの調べの波に木の葉のように漂うだけの浅田だった
案の定ロシア大会では始めてジャンプで転倒を見せると言う絶不調
つなぎを重視して練習したことですべての歯車が狂っていった
つなぎを重要視すればするほどリズムが乱れジャンプが崩れていく
またこの重苦しい曲には崩れていくイメージとはなぜかぴったりだ
 
ここで浅田陣営は迷いが出る
タラソワコーチはこのときこのプログラムでいいの? と問いかけた
浅田は変えたいとは思わない (消極的賛成だ)
 
そして浅田はマスコミの前から姿を消した
 

一方キムヨナ
浅田と同じ19歳
昨年からキムヨナは乗りに乗っている
トリプルアクセルに挑戦した時期もあったが自分自身で方向を変えた
トリプルアクセルを捨て表現力と完成度を上げることに集中した
ショートの007のボンドガールは計算された演出だ
クラシックの曲が多い中、印象度が増す
 
観客をじらすだけじらして残り45秒からの期待どうりの曲の盛り上がり
指を鳴らすシーンは注目度を一身に浴びると同時に一呼吸の休みともなる
演出と選曲の見事さ
そして19歳とも思えない妖艶さが最後のピストルのしぐさで
審査員のみならず世界中の観客のハートを射抜いた
 
浅田はここから頑張りを見せる
マスコミをシャットアウトし
体も絞れてきた
直前の大会では何とか復調して優勝を飾った
3ヶ月でよくここまで立ち直った
奇跡的な復活だ
さすがである!
なんとか間に合い期待も膨らむ
 

浅田の仮面舞踏会のショートではほぼ満点の出来だった
さあフリーだ
直前のフリーの演技ではキムヨナが
豊かな表現力とパーフェクトなジャンプ
演技終了後のキムヨナは150.06の凄い点数を見て
感極まって涙を流した
 
浅田のドキドキの緊張感がこちらまで伝わってくる
こんなことは今まで無かった
楽しんですべっている感じがほとんど無い
浅田は前半のトリプルアクセルの成功で金メダルの意地を見せる
しかし頭の中で点数を計算したとたん後半のジャンプから乱れはじめる
スケートが引っかかりジャンプが飛べない
何とかまとめたが終了時の表情は泣いているようだった
インタビューではふっと悔し涙が流れてきた
 

あえてオリンピックで新しい困難な道を選んだ浅田真央
そして自分のできる範囲の中で完成度をあげたキムヨナ
 
世界のフィギアスケーターの中で浅田真央しか進めない苦難の道のりに
あえて一段と高いチャレンジを選んだ浅田
堂々と誇りを持っていい
このチャレンジと挫折は明日の人生の成長の糧には必ずなる
そして4年後のソチオリンピックで輝く演技と真央スマイルを見せて欲しい