司馬遼太郎記念館(大阪・八戸の里)
大阪の難波から近鉄の普通列車で15分程度
八戸の里駅で降り歩いて8分程度の何気ない大阪近郊に
司馬遼太郎記念館がある
彼は1996年2月12日に亡くなった
ここは司馬遼太郎の自宅で
奥さんの意志でその庭に記念館を建てたのだという
安藤忠雄さんが建築したものとしても有名になった
決して主張せず自然と建物を共存させる
安藤の建築はまさしく司馬遼太郎の信念を受け継ぐものだ
エントランスのRが自然と調和してとてもいい
自動ドアが開くとカフェスペースとグッズ売り場
その奥に広がるのはディスプレイされた本の壁だ
もう少しゆったり読書を楽しむ場所も欲しい・・・・
そして奥には映像のホールが続く
記念館のそばの自宅では書斎がなくなった当時と
同じ状態にされており
そのまま司馬さんが座って原稿を書いている
風景が浮かんでくるようだ
書斎にはいつも辞書と辞典が500冊以上あり
彼の作家活動を支え続けたのである
記念館では本を自宅の廊下の両側にうずたかく、積み上げていたという
蔵書を安藤流にディスプレイツールとして面白く仕上げている
ただ映像は少し期待はずれ
国際社会で恥ずかしいほど揺れ動く日本
今の社会にもっと適合するメッセージが聞きたかった
彼が生んだ様々な歴史上の人物は
4万冊にも及ぶデータの上に彼が組み立て、力を振り絞って
考え描いた一滴づつの雫達かも知れない
そしてそれは読者たちによって見事にダイナミックに蘇り
日本の歴史と日本人の豊かさを表現してくれているのだ
印象に残った言葉が飾ってあった
21世紀に生きる君たちへ(抜粋)
自然こそ不変の存在
人間は自然によって生かされてきた
古代でも中世でも自然こそ神々であるとした
このことは少しも誤っていないのである
歴史の中の人々は自然を恐れ、その力をあがめ
自分たちの上にあるものとして身を慎んできた
おそらく自然に対し威張りかえった時代は
21世紀に入り終わっていくのは間違いない
人間は自分で生きていくのではなく
大きな存在によって生かされている
この自然への素直な態度こそ明日の希望となる
そうすれば人間はより一層、自然を尊敬することになるだろう
そして自然の一部である人間どうしについても
尊敬しあうようになるに違いない
そのようになることが私の期待でもある
司馬遼太郎は遠き昔に現代の日本のひずみをまさしく看破していたのである