安藤忠雄の自然観
独学で建築を学び
ボクサーから建築家へ転向した安藤忠雄
その並々ならぬ情熱と闘争精神とあくなき探究心で
世界の建築会の最高峰といわれるプリツカー賞をはじめ
世界の名だたる賞を総なめにした男
稀代の野生児 安藤忠雄の自然観をひもとくと
今の日本人に欠けている物が見えてくる・・・・・・・
安藤建築の原点ともいえるのが 『住吉の長屋』だ
彼は言う
この建築の核心は、狭い敷地の三分の一の面積を占める中庭の存在だった
住まいの中に自然が入り込んでくる分、冬の寒さは厳しい
雨の日にはトイレに行くのに傘をさして行かなければならない
住まい手に不便な生活を強いる建築は
時には建築家の横暴と非難を浴びた
だが。住まいの何を持って喜びとするかはそこで過ごす人間の価値観の問題
大阪の下町の猥雑な都市環境を前に生活とは?住まいとは?を考えた
私の出した結論は自然と共にある生活にこそ住まいの原点があるということだった
スペース、コストとも極限の条件下で建築する都市住宅
だからこそ安易な便利さより、天を仰いで”風”を感じられる住まいであることを優先した
以来30年間
いつも心に描いているのは
人々の心に生の感動をもたらす建築を抜ける風の情景
自然と共生しつつそこに住まう人間の意志を表現する建築だ
彼はこのようなことも言っている
フランスの詩人で大正時代に日本の大使もつとめた
ポール・クローデル
世界で残す民族があるとすればそれは日本人だ
彼らは貧しいけれど誇り高く高貴だ
と日本人本来の民度の高さに触れている
安藤はこの言葉に感銘を受けた
停滞する日本社会の未来に向けた再生の鍵は何より
民の持つ力にあると確信した
日本人の民度の高さは美しい自然環境の中で育まれた物だった
花鳥風月
自然に親しい生活が世界にも誇れる自然によって
優れた感性をはぐくんだ
美しい風景を取り戻すことこそ日本人のDNAを呼び覚ますことになる
情報があふれかえる時代の中で
揺らがない『価値観』を持たなければならない
同時に自分の価値観を基準に判断できる