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料理通異聞(松井今朝子)

江戸時代後期、一代でその名を轟かせた料亭
八百善
それを創り上げた栗山善四郎の物語
料理の才覚だけでなく
彼ならではのプロデューサー資質も大変興味深い
江戸時代の名だたる時代の寵児たちとの交遊
料理の難題に立ち向かう善四郎の情熱と戦略とは・・・・
 
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江戸時代の日本料理とは次のようなものだったと
本の中では書いてある
 
献立すなわち日本料理の組み立て方は
大昔から様々な変遷を経て、
この時代は少なくとも膾と平と壺と吸い物があれば可とされた。
膾は魚介や薬を刻んで和えた酢のものであり、
最初に箸をつける大切な一品だ。
平は平皿や平椀の容器を使った料理
壺は深い容器に入れたそれで調理法による分け方ではなかった。
吸い物は酒の肴になる汁の総称で
飯に付ける汁とは区別された。
 
 
また当時の精進料理の細やかさは次のように書いてある
 
精進料理は包丁さばきも鮮魚のそれほど見た目は派手ではないけれど、
野菜は包丁の入れ方次第で鮮魚よりもはっきりと味が変わる。
大根一つとっても縦に切るか横に切るかで
歯ごたえ、舌触り、出汁の染み具合が全く違うのだ
 
また見た目が地味でも意外と手が込んでいて
素人が手を出すのが難しい。
 
評判をとった葛カツオは
まず葛粉を固めに溶かして小豆の煮汁で色付けし
カツオの血合の部分は紅を差してせいろで蒸しあげた。
蒸し上がった物には半面に銀箔を貼って皮に見せかけた。
それを刺身の形に切れば、歯ごたえや舌触りは
本物と見まごうばかりだったし、辛子味噌にも良く合った。
 
 
これほどまでに洗練された精進料理は
今の時代でも伝えられているのだろうか?
 
 
祇園の料亭川上を実家とする
松井今朝子さんのあとがきには次のように書いてある
 
料理は人間が想像力を駆使して生み出す
まぎれもないアートの一種であり、長い時間をかけて
様々な場所で徐々に進展してきた、
人類史上最大最良の発明と言えるのではないでしょうか。
 
 
栗山善四郎は「料理通」という本を第四編まで出している
しかも第三編では精進料理の様々な工夫や秘伝も紹介し
八百善や福田屋の根っこを明らかにしているところも
彼の懐の深さも垣間見えるし、また潔い
時代を超えて読んでほしい本のご馳走だ!