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いとまの雪(伊集院静)

伊集院静が古希の70歳を迎え

初めての時代小説に挑んだ

題材は誰もが知っている忠臣蔵である

討ち入りの日は12月14日

12月に入りあと10日ほどの時期でもあるので

「いとまの雪」をご紹介したい

大石内蔵助・良雄の生涯を描いている

伊集院静の小説に流れているものは気骨と美学だと私は思う

そのことを明確に表現し

その上での反逆精神が胸を打つ

幼き頃山鹿素行の教えを生涯貫く大石の姿が凛として美しい

当時はあらぬ理由で多くの藩が改易の憂き目にあっていた

財政が逼迫した幕府は

米以外の産物で経済を回している小藩に目をつけた

そして小藩の改易が

幕府の財政ひっ迫を打破する手段となっていったのである

塩で知られる赤穂藩もそのひとつとなったのだ

 

浅野内匠頭の幕内でのふるまいに対し

幕府はあまりに尊厳を無視した庭先での切腹申しつけを行った

大石内蔵助・良雄は「君辱められしときは臣死す」と藩士一堂に宣言する

 

江戸の民衆は赤穂浪士の討ち入りを

今か今かと待ちわびるが

当の大石内蔵助・良雄は時期や幕府の状況を見ながら

昼行燈を決め込み

遊びにうつつを抜かすそぶりで幕府の油断を誘い

またそれに呆れてぬけていく藩士を見ながら

討ち入りの人数を絞り込み時期を待つ

 

ここでスーパーサブが登場だ

勘定奉行の大野九郎兵衛

もし万が一討ち入りが失敗した際には

後を大野九郎兵衛に託したのである

 

そして最後に登場する近松門左衛門が意外で楽しい

 

「 生きるは束の間、死ぬはしばしのいとま」

無常観や

別離の悲しみの深さ

真っすぐに生きていく男の姿が

透明感あふれる独自の美しい文章で表現されている