神様のカルテ(夏川草介)

私の恩人であり、仕事の基礎を教えてくれ

人生勉強まで数々の体験をさせていただいた方は

1999年に肺がんで亡くなった

蔵元の方で大変お世話になった方も

2017年にすい臓がんで亡くなった。

そして近親者も2020年1月にがんで亡くなった

周りを見渡すとがんの方々が多い

病院に行き、現場を見たり実際に体験すると様々な感想を持った

一生懸命治療をしていただいた先生や看護婦さん

治療を見守る家族の不安と期待

治療する本人の不安と希望、そして苦しみと悩み

そんなことを想いながら

再度神様のカルテを読み直してみた

地方病院に勤務する栗原医師が

人としての医療を自分なりに歩みを進めていく

そんな医療小説の名作でもある

緩和治療するほか方法がないガン末期の患者

安雲さん

誕生日にはもう一度山を見たいという安雲さん

の要望をかなえてあげる

準備は整い

車椅子に移った安雲さんの顔色は思っていたよりは良い

セーターの上にコートを羽織り

マフラーを巻いて完全冬対策の装いだ

頭には赤茶けたかわいらしい毛糸の帽子

なんだか安雲さんによく似合っている

帽子似合っていますね

私の声に安雲さんは嬉しそうにうなずいた

「三十五年も前の夫のプレゼントなんですよ

この帽子はお墓まで持っていくんです。

私が死んだときには、きっと頭にかぶせてくださいね、」

「夫は四十二歳で脳溢血で急死しました。

あれから三十年、ほんとに寂しい思いばかりしてきました。

寂しい寂しいと思いながら、それでも訳も分からずここまで生きてきました

ようやく寂しさに慣れたと思ったらこんな大病をし

大学の先生には見捨てられてしまい、やっぱり孤独で・・・

それだけの人生でした」

「でも最後の最後にこんな幸せな時間が待っていたなんて

本当に人生とはわからないものです」

安雲さんはその2日後に息を引き取った

その病室の戸棚から毛糸の帽子が見つかった

そのなかに栗原先生宛の手紙が入っている

先生はこの手紙を読んでいらっしゃるという事は

私はもう夫に会いに天国に旅立ってしまった後のことでしょう。

私にあの帽子をかぶせてくださるという約束を忘れずにいてくださったという事です

重ね重ね感謝に耐えません

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病の人にとって、最も辛いことは孤独であることです。

先生はその孤独を私から取り除いてくださいました

たとえ病気が治らなくても、生きていることが楽しいと思えることが

たくさんあるのだと教えてくださいました

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もしかしたら、夫が亡くなってからの三十年で

最も楽しい時間ではなかったか、と

実体験の直後だからこそなおさら

一つ一つの言葉が心に深く染み入ってくる

そして形にならぬ哀歓と対象の定まらない憤りが心を駆け抜けていく

良い小説だ