闘う葡萄酒(上野敏彦)
世界におけるワインの歴史は10000年以上だと言われている
しかし日本のワインの歴史はわずか140年
大久保利道氏がフランス視察で
ワインを楽しむ豊かな文化を体験し
国の近代化を図る政策の一環としてワイン作りを奨励したのが始まりだ
宮崎の地元の人たちは都農ワインの凄さをまだ理解していない
私もそうだった
何となくアジアで有名なワイナリーになっている
ということは認知しても
しっかり味わいながら都農ワインを飲むことはなかった
上野敏彦さんが今回書いた本は
私にとっては目から鱗だった
宮崎で葡萄を作りワインを醸すことがこんなに
難しいことだなんて想像以上のものだった
共同通信社の宮崎支局長として赴任され
3年半の間の上野さんのたゆまぬ記者魂に
感心しながら
都農の人たちの熱き挑戦の
緻密な取材を楽しく読ませていただいた
上野さんのお酒闘うシリーズの本は純米酒の神亀と都農ワイン
今からまだまだ上野さんの闘う酒シリーズを読んでみたいものだ
葡萄をテーマにした都農地域の農業の活性化は
ある一人の若者の挑戦から始まって行った
その人の名前は永友百二
田んぼに木を植ゆる馬鹿がおるげなと
陰口をたたかれながら19歳に梨の栽培から始め
終戦後に葡萄の栽培をはじめ
昭和33年巨峰は高値を呼び注文殺到となる
昭和43年都農町ぶどう協議会が設立
まさしく尾鈴葡萄のブランドを作りだした人だ
この人がいなかったらワイナリーの構想もなかっただろう
1996年第三セクターでワイナリーが誕生する
そこに1996年2月面接に来た人間が小畠暁だった
青年海外協力隊で南米に行きブラジルのワインの工場長
になりブラジル国内のワインコンクールで一等を取った人だった
面接した町長の河野氏に
どうせワインを作るなら世界に通用するものを目指したい
この言葉に即決で採用となる
しかし河野町長は人材、アイデア、ノウハウ、マーケティング、すべてがゼロ
全国378のワイナリーに立ち向かうのは容易ではないと考えていた
ここからが小畠の挑戦が始まる
支えるのは役場にいた赤尾誠二氏だ
世界のワイン醸造地は日射量が多く年間降雨量も500~800ミリがほとんどだ
都農町の場合 年間降雨量が3000ミリ
桁違いの雨の多さだ
雨が多いと開花時期にカビが生えて受粉できなくなる
あと1つの問題は土
表土が浅く黒ボク土という火山灰土に覆われているため
大雨で土壌が流れ出す
それに地元農家との軋轢
まさしく常識では考えられないワイナリーが都農なのであった
それからの軌跡は
是非上野さんの本を読んで楽しんでいただければと思う
都農ワインは世界が認めるワインリポート誌をはじめ
数々の受賞歴を持つ
ワインリポート誌(アジアランキング)
2004 もっともお得なワイン第一位 (キャンベルアーリーロゼ)
将来性のあるワイナリー第一位
2005 もっともお得なワイン第一位(キャンベルアーリーロゼ)
2007 最もエキサイティングなワイン100
2008 もっともお得なワイン第一位(シャルドネ アンフィルタード)
2009 もっとも興奮したワイン第2位 (スパークリングレッド)
チャーミングで華やかなキャンベルアーリー
柑橘系のリッチな果実感のシャルドネ
エキゾチックなシュワシュワのスパークリングレッド
再度じっくりと都農ワインを楽しんでみたい
大自然という神様は人のあくなき情熱に奇跡を起こらせてくれるのかもしれない
都農の奇跡はまず永友が起こし
その次は様々な人の情熱とネットワークが育んで行った
奇跡の結晶としてワインが誕生した
地域活性は人間の想いから始まる
そんなことを改めて感じた本であった