破門(黒川博行)
第151回直木賞の破門の著者は黒川博行
愛媛県今治市出身の65歳
1996年日本推理作家協会賞を受賞
2014年8月 本作品で6回目となる候補作となり、
最初の候補作から18年かかって151回直木賞を受賞した
自他共に認めるギャンブル好き
マカオでのカジノのシーンは
初心者でもわかりやすいカジノのエッセンスが詰まっている
賞金は何に使うかと聞かれたときに
マカオに行こうと思っていますと言い会場は爆笑だったという
さて作品のストーリーは
映画の製作に絡んだ投資話で
二蝶会の幹部嶋田と桑原が制作費用を出資するが
映画のプロデューサーの小清水が詐欺師で
出資資金を持ち逃げ失踪する
建設コンサルタントの二宮は
いつものごとく桑原に巻き込まれて
小清水を探す羽目に
そのときに現れたのが極道の2人
この2人を桑原が痛めつけたことにより
組同士の争いまで発展していく
小清水を追いかけてマカオや関西を奔走する2人だが・・・・
その先には波乱万丈の未来が待っている
極道が今の社会をどのように生き
シノギを行っているのか?
そんなリアルな現実もしっかり表している
作者ならではの長い間見続けてきた裏社会の実態が見事に描かれている
現代のシノギはしゃぶと闇金と老人と言い切るあたりは凄みがある
なんといってもスピード感と会話の妙の面白さ
キャラが立っている桑原の土壇場での頭脳の回転の速さ
そしてヤクザのスジを踏まえながら
損得勘定を瞬時に判断して、機転の効いた言い回しで
自分に有利に進めていく交渉術は
なるほどと感心させられる場面も多い
そしてなぜか憎めない二宮のキャラも楽しい
色気がほとんど入っていないのもまた良い
ただ残念なのは終わりが中途半端なことだろう
文学というジャンルにこだわらず
割り切ってハードボイルドの娯楽小説として読んでみると
この本の価値もしっかりあるのだと思う
伊集院静が彼を評して『ナニワの読み物キング』といったこともうなずける