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流(東山彰良)

第153回直木賞受賞作品
 
主人公の祖父は大陸の山東省出身
大戦中は国民党に属し
共産党に属していた多くの村人を惨殺した
大戦後は台湾に渡り
台北市で家族や親せきなどと暮らしていた
 
1975年蒋介石総統の死後一か月して
祖父は何者かに殺された
17歳の主人公は祖父殺しの犯人捜しを描きながら
当時の台北市の日常を家族や仲間との友情、淡い初恋などを通して
生き生きと表現していく
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当時の台湾の状況、中国と台湾の立場、など複雑な要素を取り込みつつ
スケールの大きい作品に仕上げている
壮大な青春大河小説でもある
 
エンディングでの主人公の夫婦の会話がとてもすてきだ
 
「ありがとうね」
「何が?」
「いろんなことを胸にしまい込んでくれて」
「…………」
「胸のつっかえを吐き出すことはいいことだけど、吐き出した言葉に引きずられて
あなたは私たちの手の届かない場所に行っちゃうかもしれないから」
 
エンディングのさわやかさで少し救われたが
私にとっては少し長く、読み進みにくい小説だった。
 
1970年代の複雑な背景を持つ当時の台湾の空気感の描写と
ストーリーの壮大さと時代背景の複雑さ、台北の人々の暮らしの表現などは素晴らしいと思うが
これほど審査員全員がそろって激賞するほどの作品かなとも思ってしまった