テロワールを目指す水芭蕉(永井酒造・群馬県)
初めて群馬県にある水芭蕉の永井酒造にお邪魔した
まず案内されたのは山の中の渓流
ここからの山はすべて永井酒造の持ち物なのだそうだ
尾瀬山系からの伏流水が永井酒造の仕込水となる
水の奇麗なこと
聞くといとうやイワナなどが生息しているようだ
飲むと軟水で柔らかい
毎年仕込みを始めるときと
酒造りが終わった時にこの場所で神事を行っているという
豊かな自然に感謝し、畏敬の念を持ち、良き酒ができることを願い
また良き酒ができたことと安全で酒造りが終えたことを報告する
来年でもここをテラスにして酒も飲めるようにしたいと言われていた
そのあと蔵の近くの吉祥寺に
この寺は鎌倉建長寺を本山とする臨済宗の禅寺
鎌倉武士の大友氏時氏がここの領地だった
そして大友氏が九州に移った後
1339年に先祖発祥のこの地に寺を建立したのがきっかけ
四季折々に咲き乱れる花が有名で花寺と言われているそう
4月下旬には水芭蕉もきれいだそうだ
小雨に煙る風情もまた良い
庭も素晴らしく季節や天気に関係なく楽しむことができる
永井社長もお気に入りで蔵見学に来た人は必ず案内されるという
さて蔵に戻り見学
永井社長は大学は建築を専攻していただけに
この工場の設計から携わっていた
当時社長だったお兄さんは、村から田園プラザを経営して下さいとの依頼があり
現永井社長が引き継ぐことになった
トップは異色のコンビだ
後藤杜氏は東芝のLSIの研究を行っていた
ある時、酒に開眼し酒造りを目指したいと
各県の酒造組合に手紙を出した
面接した永井社長の目に留まり採用されたのだという
節渕常務は高校時代からの親友
金融関係に15年勤め永井社長の説得で入社を決断したようだ
タンクは6000キロリットルと大きいが
全て高圧洗浄で対応できる
しかもタンクの温度管理が高さごとに見える化してある
上と下がどれ位温度が違うのか
一目でわかるシステムにしてある
そのため品質管理もしやすい
また災害時の停電時には緊急で集まるようにされており
この危機管理は東日本大震災で学んだことのようだ
次に案内されたのがこの部屋
タンクはすべて断熱材で巻いている
見積もりは1タンク500万以上かかるということだったので
手作りで行ったため1タンク50万程度に収まった
12年ほど前からこのタンクで生貯蔵し窒素ガスを入れ
酒の劣化を防いでいる
市場に出るときに一回火入れをして出荷する
このシステムを導入したおかげで品質が一挙にアップした
なんといっても水芭蕉はシャンパン製法のPUREを出したことだ
成功までに700回の失敗
500回の失敗後、シャンパーニュ地方に一か月ほど行った
そこで発見したのは2次醗酵の温度だった
フランスは地下室で寝かせ醗酵させる
温度は13~15度
日本に帰り再度チャレンジしつづけたらようやく成功した
製法と製造特許も取り、
これからの大きな展開も考えていらっしゃるようで大変頼もしい
先日フランスのリヨンにある女性シェフの三ツ星レストランに
PUREとデザート酒の採用が決定したそうだ
執念と頑張りとタフネスさが若き永井社長の持ち味だ
水芭蕉の目指す蔵は
この土地、地理・気候、作物、人の総称であるテロワールを大事にして
尾瀬山系でしかできない奇麗な酒造りを行っていきたいと
力強くおっしゃっていた
地方の蔵から世界を目指す意気込みと熱い情熱に期待したい