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「長期停滞論」という現実

日本のリフレ派の理論的な裏付となっていたのが
米国のノーベル賞経済学者 ポール・クルーグマン
1998年に発表した「流動性の罠」
 
中央銀行が通貨を増発させることによってデフレをインフレに持って行く政策
アベノミクスはその理論をほぼそのまま踏襲している。
 
その本家のポール・クルーグマンが
2015年10月にNYタイムス紙のコラムに
日本の金融緩和は目的とした2%のインフレを果たせずに
失敗に終わったと発表した。
日本の潜在的成長率の低さを確認していなかった。
日本における2012年からのGDPの弱さは
本質に根差すため永続的になるだろうと
事実上の敗北宣言を出したのである。
アベノミクスはその発表を受けたことで
今までの理論的な後ろ盾を失ってしまったことになる
 
 
代わって注目を浴びているのが
元アメリカの財務長官ラリー・サマーズが
2013年に発表した「長期停滞論」だ
 
世界経済において投資よりも貯蓄が好まれ
慢性的な貯蓄過剰が見られる状況
貯蓄過剰は実質金利を押し下げ
弱い需要は低い経済成長の原因となりインフレ率はタ—ゲットを下回る
 
この時期における高成長は長期的に持続できない
それは持続不可能な借り入れや資産価格に基づいているから
 
先進国はこれから10年ほど
インフレ率は1%を下回り実質金利はゼロを下回る
 
つまり中央銀行がいくら紙幣を増刷しても
これからは需要不足のため高成長は持続できないと言っているのだ
 
どうも今の日本に限らず世界経済の現実は
ラリー・サマーズの長期停滞論そのままのような気がしている
 
主要国の金融緩和もそろそろ臨界点に近づいている
アメリカは利上げに舵を切ったことで
一挙に世界経済は不安定化した
資金はアメリカに逆流し
中国の減速、原油価格低迷で先進国だけでなく
一気に新興国経済まで厳しくなった
BRICSの中では元気が良いのはインドだけで
「アイだけが残った」と言われ、これでは洒落にもならない
 
日本経済新聞1月12日の記事で
ラリー・サマーズ氏はFT誌のインタビューに答え
アベノミクスの現状をインコンプリート(未完成)と言った
 
日本は近代における長期停滞の最初のケースで
大いなる実験室だ
金融緩和で日本の状況が改善したことに疑問の余地はない。
ただ着実なインフレを伴う成長は確信できない。
2014年4月からの消費税増税は間違いだと警告した。
懸念するのは日本の人口動態
少子高齢化は日本経済全体のダイナミズムを減退させる。
高齢化が進むほど、開放的になる道筋を見つけることが重要
 
少しわかりやすく言うと
金融緩和で良くなっていた日本は消費税増で台無しになった。
いくら紙幣を印刷してもインフレターゲットに届かず
需要不足で消費マインドは改善しない。
少子高齢化の対策は外国労働者が重要となりダイナミズムをもたらす
 
最後にラリー・サマーズ氏は意味深長な言葉で締めくくった。
「我々は皆、アベノミクスが21世紀の日本再生の終わりの始まりではなく
始まりの終わりであることを願っている。」
 
大いなる実験劇場としてのアベノミクスは
歴史的に見ても世界が固唾を飲んで見守っているのだが・・・・・・
残された手段と時間もあまりない!