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PERFECT DAYS (映画)

安藤忠雄、隈研吾、坂茂など世界的な建築家やデザイナーで

リニューアルした東京渋谷区の公共トイレを舞台に

1985年に小津安二郎に捧げたドキュメンタリー映画『東京画』

を撮ったヴェム・ヴェンダース監督が映画を製作する

しかも主人公役は役所広司

この企画だけでも映画を見たいと考えていた

しかもカンヌ映画祭で最優秀主演男優賞も受賞したのだから

期待も膨らむ

正月明けの日曜日

お客も落ち着いたのかなと考え

宮崎キネマ館で見たのだが

客席はほぼ満席状態で人気のほどがうかがえる

さて主人公の平山は古いアパートで独り暮らしの中年男性

仕事は公共トイレの掃除人

儀式のように繰り返される朝のルーティン

朝起きて布団をたたみ、歯磨きをして顔を洗い

室内の植木に水をやり

出かける前に缶コーヒーを買って車に乗る

運転しながらカセットテープで往年のロックやポップ音楽を聴く

きっちりトイレの掃除を行い

昼は近くの神社の境内でパンを食べ

木漏れ日をカメラで撮る

仕事が終わったら銭湯でゆったりつかり

自転車で浅草の居酒屋に行く

帰った後は好きな文庫本を読んで眠りにつく

最低限の質素な暮らしだが、仕事はきっちりやり

好きな音楽を聴き

好きなお酒を飲んで好きな本を読み

一昔前のカメラで木漏れ日を撮る

絶え間なく揺れ動く木漏れ日をモノクロで撮った写真は

まさに光と影のゆらめきである

そしてそれは自然から平山への贈り物なのかもしれない

日常の中に自分なりの幸せを見つけ

小さな揺らぎで心が揺れ動く日々を丹念に描いている

どんな人生であっても

自ら選択した生き方は限りなく美しい

役所広司の演技も素晴らしいが

カセットテープで流れる音楽のセンスも抜群

しみじみと深いラストシーンは

ニーナシモンのグッドフィーリングの音楽と溶け合い

なぜか泣けてくる

幸せとは何げない日常の中にある

そんなことを想い出させてくれる素敵な作品だ