油揚げ(平松洋子)

私は酒の肴に油揚げは必需品だと考えている。

食のエッセイストとして活躍されている

平松洋子さんが書いたものがとても良かったのでご紹介したい

 

油揚げ

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酒の肴には何はなくても油揚げ

朝ごはんの味噌汁にも夕餉のおかずにも油揚げ

夜更けに小腹がすいたら油揚げ

やっぱり油揚げが好きだった在りし日の祖母でも

私の贔屓ぶりを「こんこんおきつねさんじゃあるまいしと」

とあきれたに違いない。

油揚げは七変化

いや七変化どころか怪人二十面相

驚くべき化けっぷりを見せる

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四角四面の仏頂顔をしているけれど

こちらの出方次第では破顔一笑

でかいまま煮含めてよし

ざっくり短冊に切ってよし

お行儀よく色紙に切ってよし

美しい霰切りも良し

四角でも三角でも、ふわふわの極細のせん切りにしてもよし

そろりと袋を拡げれば、酢飯を詰めていなり寿司

卵を落とし入れればおでんの種

異種格闘技に持ち込んで、チーズを入れて焼くひともいますね

私は粗く崩したブルーチーズをたっぷり入れて楊枝で止めこんがり焙る

白ワインにもぴったりの役者ぶりにぞっこんだ。

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ところで酒肴に焙った油揚げには断じてしょうが醤油である

熱い艶肌にじゅっと醤油が怪しく光る

その一瞬だけ、妙に色っぽさが放たれるように思えるのは

やっぱり贔屓が過ぎるのでしょうか。

 

 

きつねうどんのきつねがあるだけで

豪華さが違ってくる

フキと油揚げなど野菜との相性の良さも抜群

小腹がすいたらいなりなどの多様性も素晴らしい

油揚げは出汁も文化も自ら吸収して食材として発展していったように思える

まさに時代を超えて逞しく生き抜いてきた庶民の味だ!