「海と人と魚」―日本漁業の最前線(上野敏彦)

大吟醸を楽しむ会を開催するようになって18年がたつ
その際、ツマミの全国の食材を取り寄せるのだが、
特にここ数年水産物の変調が気になっていた。
取れるはずの魚が取れなかったり、価格が大幅に上がったりで
昔ほどなかなか良い魚が入らない
海流や水温などの異変だけではない
大規模な変化が日本の海で始まっているのを肌で感じていた
 
そんなころ、共同通信の宮崎支局長だった上野敏彦さんが
本社に帰られ、
2013年から 「海と生きる」~往年の輝きを求めて~
の連載を共同通信から1年間配信された
東京の新橋の居酒屋で酒を飲みながらその話を聞き、
記事も送っていただいたことがある。
 
それをもとに
また上野さんは全国の漁村や里海を歩き回り、船に乗り、魚を見て
足掛け5年で地道に
生の漁業関係者の声をまとめあげたのが「海と人と魚」の本だ
3月14日に農山漁村文化協会から出版されたばかり
いつもながら感じることだが上野さんの記者魂には頭が下がる
 
 海と人と魚
 
30年前には世界一の漁業生産量を誇った日本
今では世界第8位に甘んじている
資源の減少、高齢化、燃料の高騰などと共に
東日本大震災、TPPが追い打ちをかけ、漁業の未来は先が読めない
本書では
ハタハタ、さんま、ホタテ、牡蠣、のどぐろ、などの厳しい現実や
本モロコ、ビワマス、アイゴなどの
あまり知られていなかった魚の実情も書いてありとても興味深い
しかも厳しい現実の中で
たくましく歩みを進める漁業者の姿が生き生きと描かれている
 
あとがきの中で
上野敏彦氏(現在共同通信 編集委員兼論説委員)
はこう書いている
日本の漁業には2つの主張があるという
一つは
日本も魚の乱獲に歯止めをかけ資源管理をきっちりするため
漁業協同組合が持っている漁業権を北欧のように
民間企業にも開放して漁業再生を目指すべきだ
二つ目は
資源の減少は自然減少の部分もあって
海を守る漁業者の日々の努力にも目を向けるべきで
漁協を問題視してほ始まらない
 
このような複雑多岐にわたる日本の水産業の問題を
淡々と取材し、生の声の報告集としてまとめ上げたのは
上野さんならではだろう
まだ日本にたくさんいる情熱を持った漁業者にエールを込めて
あとがきは終わっているが
将来の日本ならではの里海資本主義を目指す
元データともなる貴重な本だと考える