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トロ伝説(築地の記憶)富岡一成

15年魚河岸で働いていた富岡一成氏が書いた

「築地の記憶」の本がある

今はなくなってしまった築地の裏表を

詳細に描いているとても良い本だ

文章だけではなく築地で働く職人たちの真剣な表情

ほっとしたときの笑顔等々の写真もとても良い

豊洲に移転して2年ほどたったが

私の中の記憶もまだ築地は鮮明に残っている

その本の中にトロ伝説があるのでご紹介したい

 

トロ伝説

 

鮪の脂身を「トロ」と言うのは

日本橋の老舗「吉野寿司」から始まったという

なんでも三井物産の社員さんの命名らしい。

大正時代にこの店を贔屓にしていた三井物産の人たちは好んで

マグロの脂のところを注文していたが、これには名前がなかった

「初めは段だらを頂戴」とか

「シモフリ握ってよ」なんて注文していたが

もっと気の利いた符牒にしようという事になり

口の中でトロっと溶けるからトロというのはどうだい

なんて決めたのだそうだ

多分それはホントの話だろう

だがそれがどうして世間に広まったのだろうか

いろんなところで同時に使われだしたことだって考えられる

何といってもその時代に生きていないのだからわからない

また昔はトロは捨てられていた、なんてことがよく言われる

私も何度か書いた

脂身は傷みやすいから、冷凍技術も輸送手段も発達していない時代には

腹痛を連想させる代物だったことは想像に難くない

だがそれだってホントかどうだか

もちろん商売物としての価値は低かったにしろ

ぜったに食わなかったというのも不自然な話ではなかろうか

確か明治の人が、「アレはうまい、好物だ」なんて書いているのを読んだ記憶がある

やはり明治生まれで、マグロの大旦那だった古老に

話を伺ったときも

「トロを捨てたことは一度もない」と言っていた

トロの話はどれも面白いが本当はわからない

定説とは確かめようがないことを言うのだろう

 

大正から昭和にかけて不変の人気の寿司ネタとなったトロは

世界の寿司ブームや本マグロの需給の逼迫も有

今や高級寿司ネタの代名詞でもある

トロの起源を探りながら

またトロを存分に食べに行きたいと思うこの頃だ

そうだ!

すし屋で段だらと一度言ってみよう