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向田邦子没後40周年

向田邦子が台湾の飛行機事故で亡くなって

早いもので40年が過ぎた

数々のテレビドラマの脚本だけではなく

エッセイストや小説家としても活躍し

直木賞まで受賞した

40年たった今でも私の心に生き続けているのが向田さんである

 

旺盛な好奇心と細やかな観察力から生まれる

独自の文章は

人の心の機微、情景だけでなく空気感までも現していた

美味しい物にも目がなく旅行も好き

風のように軽やかに生きた

そんなライフスタイルにもあこがれていた

 

女の人差し指から私の好きな美味しい文章を少しご紹介!

 

板前志願

 

一に材料、二に包丁、三、四が無くて五に器

と言うのが私の信条である。

材料はケチらないで極上の物をそろえよう。

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献立。これがまた楽しみでもある。

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突き出しは、キュウリとウドのもろみ添え

向付に、染付の向付に

とろろ芋を千切りに刻んで、なめ茸をちょんと載せて出そうか。

いや、アッサリとわさびと海苔で、三杯酢で行こうかな。

こんな調子で原稿用紙に献立を作って、いつも、一時間は遊んでしまう。

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こまやかな野草の味

 

野草の味わいを覚えると、

今まで死んだ野菜を食べていたことに気が付きます。

雑草と大雑把に呼んでいた草の中に、

こんなに可憐な形と、こまやかな味わいをもつものがあったのかと

目を開かれる思いでした。

白ツバキの花びらは、揚げると薄いあめ色に色づいて

控えめな気品のある甘さが舌に残ります。

アズキナは、素揚げにすると

杉箸に色が移るかと思えるほど、鮮やかな翡翠の色に染まります。

タラノメの天婦羅を王者の味とすれば

このアズキナは女王格の美しさとおいしさといえましょう。

淡白なようでいて、強くて濃い味がいたします。

谷戸の上を二羽のトビがゆっくりと輪を描いています。

鹿の肉とヤマウドのフライをねらっているのかもしれません。

さらわれないうちに、赤ワインでいただきました。

ワイングラスの中に桜の花びらが散り、薄赤く染まっています。

年々歳々日と同じからずと申します。

人は病んだり、老いたりするというのに

自然は毎年同じ時、同じ場所に同じ花をつけ、実を結ぶのです。

なんとたくましくそこやかなことでしょう。

「天行は健也」(易経)

忘れていたこんな言葉を思い出しました。

 

品のある文章はセンスだけではなく、

より深く全てを表現しているのが向田流

自らの価値観を大事にし

風のように軽やかに生きた向田邦子

その幕切れも、彼女が書いたドラマその物のようであった。