富山市岩瀬の地域再生
大吟醸を楽しむ会の常連蔵でもあり、
個人的にも親しくさせていただいている富山の
満寿泉の桝田隆一郎社長は町づくりの社長という別の顔を持っている
2004年に設立された岩瀬まちづくり株式会社の社長という顔である
桝田酒造店 桝田隆一郎社長
富山市岩瀬浜の地区は江戸時代北前船が寄港する交易地として栄えた
加賀百万石の地でもあったことから米や材木などを江戸に持っていく港として
重要な場所であった
高度成長期には港も役割を果たしていたが
工場の撤退や縮小などで岩瀬地区の人口は急激に縮小していく
富山駅と岩瀬地区を結んでいたJR富山港線は
利用客の急激な減少で2006年2月には廃止となるが
富山市としても地域活性のためには交通網の充実が欠かせないと
森市長自らヨーロッパのLRT(ライトレールクレジット)を視察
地域再生はこれだと実現に向け行動に移した
廃止からわずか4か月後の2006年6月には稼働することができた
ヨーロッパを思わせるスマートな外観、静粛性、デザイン性も評価が高い
市長の一連の素早い行動は民間にも伝播していく
岩瀬地区でも街の景観を保存しようという動きが一気に高まってきていた
過疎化した地域とぼろぼろになった建造物
森家が国の重要無形文化財になったのを契機に
地域の伝統や個性を生かし
住民が誇りを持つことができる
住んで気持ちが良い町の実現をめざし若武者が立ち上がった
2004年8月桝田隆一郎氏は有志で岩瀬まちづくり株式会社を設立
具体的な行動は町並みの修復と保全
岩瀬地区に現存する民家や土蔵を買い上げて再生していくことだった
まさしく土蔵イノベーションである
北前船の廻船問屋 森家 北陸銀行も協力
2005年から富山市で開始した修景等の整備事業も活用し
伝統建築の外観はそのままに内装は伝統を生かしながら
木工を使って現代風にアレンジしている
一つ一つの建物が非常にセンスがある
これが第一印象だ
若き社長が世界の街を見てきた目利きの良さが随所に表れている
北前船をモチーフにした造形物が公園に
完成した建造物は
彼の目から見た独自のプロデュース力で
飲食店やアーティストや職人さんを選別し
格安で貸しているのである
酒店、蕎麦屋、工房、その他
今まで61区画の土地と12棟の建物を取得
その中でもシンボル的な建物が森家の米倉庫だったという
全長で数十メーターある広い建物だ
正面は田尻酒店、その次はフランス料理のレストラン
そしてガラス工房と3つのお店が一つの建物に入っている
田尻さんは今年宮崎の大吟醸を楽しむ会に来られるのを
楽しみにされていたのだが急遽直前にご逝去された
本当に残念だ
田尻酒店の店内が凄い
18メートルにも及ぶセラーは13度に管理されている
ご冥福を祈りながら店内を見学させていただいた
田尻酒店の店内 1夜1ゲストのフランス料理店
岩瀬の伝統建造物をいかにハードと共にソフトまで再生できるか
隆一郎氏には壮大な夢がある
私たちは観光客が来る街を目指すのではない
楽しい町、誇れる街を目指すのだと
それは目的を持って来る街だという・・・・・・
そして事業として持続し、若者やアーティストが自然に集まってくるような地域を作りたいという
2014年には富山も新幹線が開通し、よりLRTの集客効果も期待できる
2年目から黒字という岩瀬まちづくり会社
1人の青年社長が生み出す
富山岩瀬ならではの長期的な取り組みは
廻船問屋という地域資源をブラッシュアップし
地域文化の再構築と新たな日常生活の暮らしの創造に他ならない